自分が思うように評価されていない。やりたい仕事ができない。スキルアップを図りたい。
転職を考えるきっかけは様々あります。
人材の流動が激しいといわれるIT業界では特に転職率は他の職種と比べ、特別なことではないようです。
もっとも、現在のような不況下ではおいそれと転職に踏み切ることは相当に勇気のいることですが、ことIT業界のエンジニアにとっては人材不足ということから、常に求人があるためハードルもそれほど高く感じないのかもしれません。
何よりもハードワークといわれるIT業界ですが、上流工程と下流工程では仕事の内容も年収も大きく違ってきます。せっかくの知識も下流工程の3次、4次の下請け会社では満足に活かし切ることはできませんし、いつも同じような内容で全体の部分的な作業ばかりではやりがいというものを感じることは少ないのでしょう。
確かにITエンジニアの仕事というのは細かく分類され、それぞれに分業化されていることで効率よく進めることができるのですが、それだけにいったい自分がどの位置でどういった役割を果たしているのかわかりにくくなってしまいます。
どのような職業でも同じでしょうが、仕事の満足度というものは、単に成果品を届けるだけでなく、それによって社会にどのような影響を与えているのか、顧客に喜んでもらえているのか、今後どう発展していくのかといった仕事の先まで見ることができて初めて得られるものではないでしょうか。
たとえば土木の世界であれば、一つの橋を作り上げたところが終わりでなく、それによって交通がスムーズになったとか、地元住民に感謝されるとか、企業誘致にまで発展するといった先のことが見えてくれば橋の建設のどの部分を担当していてもやりがいというものは感じることができるはずです。
ところが、ITの場合、この橋を作っていることすらわからない場合もあります。構造体をつなぐボルトを制作する会社が橋の建設には直接かかわっていないのと同じで、末端のITエンジニアは全体像を知らされないまま作業することもあるため、自分の仕事がごく小さな世界の中だけで終始しているようにしか感じられなのです。
転職を意識するのはこうした自分自身の仕事に対し疑問に感じ始めたころと言われています。しかし、分業化が進むこの業界でこうした問題が解消されることは少なく、今後も人材の流動化は続くものと考えられます。